ミッチャーリッヒ・アレクサンダー(Alexander Mitscherlich)
ドイツの精神分析医および社会心理学者である。ドイツ,ミュンヘンで,化学者のハーボード・ミッチャーリッヒとその妻クララ・ミッチャーリッヒの間に産まれる。亜硫酸塩プロセスの発明者である,ミッチャーリッヒ・アレクサンダー(化学者)は祖父であり,上流階級で権威主義的な家庭で育つ。ミュンヘンのルートヴィッヒ・マクシミリアン大学で歴史,美術史,哲学を学んだ後,エレンスト・ニーキッシュの国家革命運動に参加,その出版物を販売したため,SA(Sturmabteilung:ナチスの準軍事組織)の標的にされ,短期間の投獄を受ける。その後,ハイデルベルク大学で博士号を取得する。
第二次世界大戦後の1946年,ニュルンベルクでの「ナチスの医療裁判」の委員会の委員長を務める(ナチスの医療裁判について,詳しくは,https://de.wikipedia.org/wiki/N%C3%BCrnberger_%C3%84rzteprozessを翻訳して読むことをお勧めします)。そこで,強制収容所でのドイツ人医師の犯罪等を報告した。妻のマルガレーテと共著である「喪われた悲哀」で集団に潜むファシズム的基盤を指摘し,ヒトラーへの熱狂的な同一視は,民衆の内面的な脆弱さの妄想的投射だと鋭く指摘した。
参考文献:
・Mitscherlich, A., Mitscherlich, M., 林, 峻, & 馬場, 謙. (1984). 喪われた悲哀: ファシズムの精神構造 / : 新装版. 河出書房新社.
・Mitscherlich, A., & 竹内, 豊. (1979). 攻撃する人間: 新装版. 法政大学出版局.
・Mitscherlich, A., & 小見山, 実. (1988). 父親なき社会: 社会心理学的思考 / 新装版. 新泉社.
・Mitscherlich, A., 中野, 良, & 白滝, 貞. (1983). 心身医学的考察 (第2刷[再版] ed.). 法政大学出版局.